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錬金術から生まれたもの

錬金術から生まれたもの

錬金術がどのようなものかはすでにお話しました。残念ながら、主目的である賢者の石やエリクサーの精製は失敗に終わりましたが、その技術の研鑽過程においてさまざまな副産物が生み出され、現代でもその恩恵は続いているのです。

「王」という名を持つ水〜王水

ジョセフ・ライト作 『賢者の石を探索する錬金術師』ヨーロッパで錬金術という概念が生み出され、金を精製しようとするときに錬金術師が困り果てたことがありました。その当時生成されるあらゆる酸を用いても、肝心の金を溶かすことが出来なかったのです。

そんなときに、十字軍が遠征先のイスラムから伝えたのが、イスラム錬金術師たちが作り出した「金をも溶かす水」王水でした。金はもちろん、プラチナなどの貴金属も溶かすことが出来た王水は、錬金術の発展に大いに役立つ事になったのです。

現代では、王水に金を溶かしたものは塩化金酸とよばれ、医薬品・陶磁器の装飾材料・医療用の材料・金メッキの素材など、さまざまな分野に幅広く活用されています。

中国・日本を追い越せ!〜ヨーロッパ産磁器

磁器は陶磁器の一種であり、日本の有田焼などが有名どころですね。中世ヨーロッパではこの磁器を作ることが出来ずに、日本や中国からの輸入に頼っていました。しかし、航海技術も低く、海賊などの出没もある交易による磁器の輸入は危険と、莫大な値上がりを伴うものでした。そのため、磁器のヨーロッパ内での製造は夢であり、これを始めて可能にしたのが、錬金術師ヨハン・ベトガーでした。

以降、ヨーロッパでも磁器の生産が可能になったのです。いまや、マイセンなどの磁器は日本にも輸入され、人気を博しているのはご存知の通りですね。その経済効果は、本物の金を錬成するよりも高かったのでは、とさえ言われています。

「ランビキ」とはなんぞや?〜蒸留技術

ランビキというのは蒸留器の一種で、漢字にすると「蘭引き(蘭はオランダのこと)」になります。日本にはオランダ経由で輸入されたためにこう名づけられました。最も初期の蒸留器ではありますが「蒸留」という技術が科学にもたらした影響は計り知れないものがあります。

今まで高純度の液体を手に入れる事は、不可能に近い技術でしたが、蒸留器の発明はそれを一気に解決するものだったからです。これにより得られたさまざまな高純度の薬液は、科学技術の発展に大いに役立っていったのです。現在ではさらにさまざまな蒸留器が発明されていますが、ランビキこそが蒸留器の始まりだったのです。

どんな目的で使うのか〜火薬

中国の錬金術である、錬丹術の研究を重ねるうちに偶然に発明されたとされるのが火薬。しかし、火薬の利用方法は火薬王ノーベルの嘆きに代表されるように、決して平和的な利用だけではありませんでした。

しかし、一度平和的利用に目を転じれば、各種鉱山での発破作業など、さまざまな点で人間の役に立ってきたといえます。現在でも鉱山、花火、工業用途など、幅広い分野で火薬はなくてはならないものになっているのです。

硫黄と水銀と塩〜医学

著名な錬金術師にバラケルススという人がいます。彼は金ではなく、人間学に絞った…もっと言えば、医学という世界で錬金術を試みた男です。硫黄を男性、水銀を女性、塩が両者をつなぐものとして研究を重ね、医学の礎を築いたとされています。

このほかにも錬金術では、ちょっと言うのをはばかられるような研究などもされていました。しかし、こうした実験・研究成果が近代医学にとって重要な役割を果たすのです。

コラム:最後の錬金術師〜アイザック・ニュートン

アイザック・ニュートンニュートンといえば、万有引力の発見者として知らぬものは無いといえますが、彼自身は錬金術に傾倒しており、錬金術師としても名の知られた人物であった事はあまり知られていないようです。しかし、りんごの落下を見て思いついた(この話自体はフィクションとされています)万有引力の発見が、近代物理学の元祖となりました。

つまり、自身が傾倒し、研究を重ねた錬金術に彼自身がとどめを指した形になってしまったわけですね。そこからニュートンには最後の錬金術師という名が与えられたのです。最後の錬金術師であり、最初の近代物理学者、アイザック・ニュートン…彼の胸中はいかなるものだったのでしょうか。

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