このページをブックマークする
通貨としての金

通貨としての金

もともと金は貴重な鉱物で、流通量自体が少ないのですが、その他にもう一つ、大事な事情があるのです。実は、各国が多かれ少なかれ金を備蓄しており、こうしたストック量だけで、現在まで人類が掘り出してきた15万トンのほぼ半分、7万トン以上の量に達するのです。

信頼できるものはカネではない〜金の普遍的な価値

お金一万円札の原価など、20円くらいのものです。しかし、日本国政府が一万円の価値を保証しているので、日本はもちろん海外に行っても一万円分の品物を購入できます。しかし、もしも日本が今にもつぶれそうな状況だったら? 

他の国としては、いつ紙くずになるかもしれない一万円札に一万円分の品物を渡す事はできません。しかしゴールドならば、どこの国でも普遍的に価値が認められていいます。当然、一万円分の金で一万円分の買い物をすることが出来ます。(実際は相場というものがありますが)

つまり、金の価値を保障するのは日本ではなく金の価値を認める全ての国なのです。自国がどんな状況であっても、金は金として価値を保持するので、各国ともいざというときのために金を備蓄している、というわけですね。「金は国境を越える通貨である」という言葉があるほどです。

いつでも買取いたします〜金本位制

金は確かに重要な貴金属ですが、他にも貨幣の役割をした金属は銀を始め、いろいろありますね。それなのになぜここまで金が優遇されているかを説明するには、金本位制という制度が果たした役割を話す必要があります。さて、この金本位制には二つあり、金貨本位制と、地金本位制に分かれます。その二つについて紹介してみましょう。

金貨本位制とは

まずは金貨本位制から。これは簡単に言うと、貨幣そのものを金にすることによって、金の価値とお金の価値を近づけたもの。もしも、その国がなくなってしまったとしても金貨を金塊に変えればいいわけですから、金貨を持つほうからすれば大変リスクが少なくなるわけです。

ただし、これには2つの欠点がありました。1つは金貨が重いこと。これは多額の取引をするときに持ち運びが不便ということです。もう1つが、“金は高い”ということ。どの国も、金貨を充分な量用意できるだけの金を用意するのは難しかったのです。

地金本位制

こうした欠点を改良したのが地金本位制です。持ち運びの楽な紙幣や、より多くの価値を持たせたお金を発行するものです。例えば、金が百円分しか使われていない貨幣でも、その国が一万円分の価値があるとしたお金を発行できるシステムです。

ただし、そのお金はその国が責任を持っていつでも相応の金と交換しなければなりません。こうしたお金を兌換紙幣(だかんしへい)と呼びます。一万円札を日本政府に差し出せば、いつでも一万円分の金と交換する、と国が約束するわけですね。これなら金という裏づけがあるので金貨本位制の利点を受け継ぐことが出来るのです。

欠点としては、その国の経済が信頼ならない場合、その国の紙幣を貰ったらすぐに金と交換する人ばかり、ということになってしまいます。それでは金がいつまでも流出する一方で、その国の備蓄している金が底を尽いてしまう可能性があります。戦前の日本がいい例で、金が底をついてしまったので、一時的に金の替わりに銀と交換する銀本位制に移行したことがありました。

貨幣経済の黎明〜金本位制の歴史

昔から金は大きさのわりに価値があるとされていて、しかも一定の品質でしたから、物々交換の際にも人気のある品物でした。貨幣としての下地は持っていたわけですね。やがて、1816年、イギリスがソブリン金貨を発行します。

普通の貨幣であれば、発行する国が唯一無二の発行元になるのですが、この金貨に関しては品質などの基準さえ満たせば誰が発行しても(実質には個人ではなく、他の国家ですが)よく、もしも気にいらなければつぶして金地金に戻してもかまわないとした、世界初の“無制限金貨”でした。

各国の対応

当時勢いのあったイギリス政府を追随して、独自の無制限金貨を発行する国家、ソブリン金貨を自国で発行する国家など、いくつかの対応が見られましたが、いずれにせよ金貨本位制は受け入れられ、急速に普及していくのです。

日本も遅れること数十年、金本位制を導入しました。しかし、各国は手に入れた円をすぐに金地金に交換し、金の流出がとまらなくなってしまって、暫定的に銀本位制に移行したのは上に述べたとおりです。

世界大恐慌と金本位制の終焉

国ごとにさまざまな事情はありましたが、それでも1929年まで、金本位制は大半の国で続けられてきました。しかしこの年、世界大恐慌が起こり、政情や経済に不信をもった人々は次々とお金を金に交換していきます。

こうして各国とも交換するだけの金を保持しきれなくなり、やむを得ず次々と金本位制から離脱していきます。イギリスから始まった金本位制は1937年、最後に残ったフランスの離脱によって、ここで幕を引くことになったのです。

そしてブレトン・ウッズへ

その後、第二次世界大戦が終わり、アメリカは圧倒的な国力と大量の金を保有するに至りました。そしてその経済力をもって金為替本位制を柱とする、ブレトンウッズ体制を導入したのです。金為替制とは、例えば円は金本位制を放棄したので、円を直接金に交換する事はできないのですが、360円で1ドルと交換できました。そして、ドルは相応の金と交換できる、というのが金為替本位制です。

つまり、アメリカと修好していれば、その国のお金は間接的に金と交換できるわけです。これが金為替本位制で、日本を始めとする各国が戦後の経済復興をなすために欠かせない要因でした。

ニクソンショック

金為替本位制は、言うならばアメリカの強力な経済力の裏づけがあってこその制度でした。しかし強大なアメリカとはいえ、いつまでも好景気というわけには行かず、次第に経済に陰りが見え始めます。そうなると、金為替本位制はアメリカ経済に深刻な影響を与えるようになりました。

そしてついに1971年、当時の大統領ニクソンが金との交換停止や、固定為替から(1ドルは必ず360円と交換できた。またはその逆)変動相場(1ドルが何円になるかはその時によって異なる)への移行を発表し、ここに金本位制は完全に終了したのです。

金本位制がもたらしたもの〜貨幣としての金

1915年の4ダカット金貨こうして、現在は金本位制を導入している国はありませんが、どの国に置いてもやはり金はいつでも信頼できる第二の通貨として重要視され、備蓄され続けているのです。現在は金にも変動相場制が採用され、多少の値動きはあるものの、抜群の信頼性を誇るものとして投資対象にされているのはご存知の通りです。金と貨幣の関係は切っても切れないもの、なのですね。

金の裏づけのない金貨

日本では10万円金貨というものが発行されたことがあります。しかし、金貨には10万円に満たない分の金しか使われていません。ここが落とし穴で、例えば5万円の金で、金貨を勝手に作ってしまったら、5万円丸儲けですよね? 

その上、金貨は材料さえ揃えられればお札よりコピーしやすかったり、記念硬貨なので、見慣れたお札より見破られにくかったりといった条件が重なって、大量の偽金貨が出回ってしまいました。かといって、今では10万円分の金で10万円金貨を作ったとしても、価値が変動するので、10万円で買った金貨を10万円以上の価値がついた時点で売ってしまえば儲けられてしまいます。いまでは高額の金貨を出す事はかなり危険を伴うのですね。

ページの上に移動
  • 金のインサイド・ストーリー
  • 金の秘密
  • 金と人類
  • 金に魅せられた人類